個人や企業がアイデアやプロジェクトを掲げ、それに共感した多くの人から少額の資金を集めるクラウドファンディング。新しい資金調達の手段として着実に浸透し、先月国内でもクラウドファンディング法案が成立しました。

Kichstarterを中心に、多くのイノベーティブなプロジェクトをバックアップしてきたこの手法は、不動産でも取り入れられ始めています。

 

不動産クラウドファンディングとは

クラウドファンディングは主に投資型、寄付型、購入型の3種類に分類されています。(詳しい説明はこちらを参照)

不動産の場合は、基本的に投資型となり、デベロッパーが多くの投資家から少しずつ資金を集め、投資家に配当という形で還元していきます。利回りや最小投資単位はプラットフォーマー(運営会社)により異なり、プロジェクトの進行もデベロッパーが行うケースやプラットフォーマーが自ら行うケースまで様々。

デベロッパーの新しいファイナンス手段となる一方で、不動産への小口投資を可能にしています。

「不動産投資の民主化」

というなんともセンスのいい言葉で表現されていて興味津々なのですが、Kickstarter同様、まあやっぱりベースはアメリカなわけです。

とはいえそのアメリカでも法規制が邪魔で、自由に投資ができる状況ではありません。米国証券取引委員会(SEC)の規制で、適格投資家(年収2,000万円以上or純資産1億円以上)以外の投資家からは、最大1億円までしか広く公には集められないというのがあり、これが最大のハードルです。1億円でできる不動産プロジェクトなんてたかが知れてますし、公に募集できなければ従来の私募ファンドと変わりませんので。

 

注目されている不動産クラウドファンディング3社

そんな中でもすでに百近い不動産クラウドファンディングのサービスが誕生していますが、今回はぼくが気になった3社を紹介してみます。

 

Fundrise

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多くの人に不動産投資の門戸を広げたい!というミッションを掲げており、不動産クラウドファンドといえば、一番に名前が上がる企業。

2010年から構想を練り始め、クラウドファンディングの規制緩和策であるJOBS法案の成立後、2012年に設立。先月1stラウンドで31億円を調達(すごい!)。VCじゃなく、中国のSNS運営会社や不動産会社などの事業会社から調達してるのがいい感じです。

最小投資単位100ドルから投資可能で、適格投資家(富裕層)じゃなくても投資可能としています。規制により、調達総額は3,000万円から1億未満がメイン。全米の約80社のデベロッパーがこのプラットフォームに登録しており、正式なプロジェクトになる前に、「こんな案件あったら投資したい人いますか?」というテストマーケティングの機能も提供しています。

 

Realty Mogul

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SXSWを始めいくつものピッチコンテストで勝っている注目株。先月VCから9億円の調達しています。

基本的には適格投資家(富裕層)が対象。条件により適格投資家以外(一般人)でもオッケーなプロジェクトもいくつかあり。

オープン当初は投資期間6ヶ月、最小投資単位50万円、総額1,000-2,000万円というエントリーしやすい案件から始めて、最近では投資期間5-10年、最小投資単位100-200万円、総額3,000万円-1.5億円あたりのプロジェクトが中心になってきている。

ローカルの不動産オペレーターと組んでマネジメントを行なっている。リターンに加え、オーナー専用の、ホテルやレストランのディスカウントがあったりするのはいいですね。Fundriseと並び、知名度はトップ。

 

Prodigy Networks

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ニューヨークのど真ん中に革新的なホテルを作っちゃうような大規模で目を引くプロジェクトを行うのが特徴。

CEOは元不動産ブローカー。マイアミでいくつかの開発プロジェクトを手がけ、その後2007年にニューヨークに移転。2009年にクラウドファンディングをスタートする。コロンビアの最高層ビル建設プロジェクトでは、4200人の投資家から2年弱で約200億円を調達。これは世界記録らしい。(コロンビアは法規制がゆるいらしく、これはアメリカではできない規模)

ニューヨーク第一弾プロジェクトは48件の投資家から24.5億円を調達。最小投資単位は2,500万円。これも実はクラウド(公に)で集めていないので、規制対象外。

現在募集中の第二弾プロジェクトは、なんとワールドトレードセンターから1ブロックという好立地。アパートメントを長期滞在ホテルにコンバージョンするそうです。総額31億円を絶賛募集中。

ProdigyDesignLab.com

というサイトまで作って、設計・デザインをクラウドソーシングで行う、となかなかカッコイイことを言ってますが実際にはただのコンペっぽいです。パブリックスペース、プライベートルーム、デジタルサービスの3つのコンペにわかれていて、4月に締め切りでまもなく結果発表とのこと。

提案されたプランはここで見れます。

CEOのNinoさんの思想も素敵です。

“Crowdfunding provides the public with the opportunity to invest in solutions that solve their communities’ needs for a profit.”

同社のブログによるとハーバードビジネススクールの不動産サミットでもプレゼンしており、業界でも注目度はかなり高いようです。第三者機関が資金の管理を行うので、安心ですよとのアピールも。

 

と、この会社はプロジェクトがカッコイイので調べてたら長くなってしまいましたが、結論としては今のところクラウドファンディングではなく投資家数の多い私募ファンドですね。

以上、3社を紹介してきましたが、シリコンバレーを代表するエンジェルインベスターY Combinatorなどから1.6億円調達したRealCrowdも要注目ですし、アメリカの不動産クラウドファンディングがいま熱いことは間違いありません。

 

不動産クラウドファンディングの課題

しかし、現状では課題もあります。

 

1. 法規制

アメリカでもまだ法規制が邪魔で全然やりたいように出来ない状況。ただ、そこはアメリカ。GoogleやYoutubeを産んだ「グレーは白」と見る文化ですから、近い将来ガンガン緩和してくるでしょう。それを見越しての各社の大型資金調達と予想します。

一方日本では、先月5/23にクラウドファンディング法案というのが可決されましたが、これは不動産的にはかなりしょぼい緩和で、クラウドファンディングのプラットフォーマーは資本金1,000万で設立OKだけど、投資家1人あたり投資は1社に年間50万円まで、企業は調達額年間1億円までというもの。まあ、不動産ではなくベンチャー企業への投資を想定しているので仕方ないですが。

あるとしたら、プロジェクトごとに会社設立して、エクイティで1億調達して、デットで5-10億。トータル数億円規模のミニプロジェクトならできますね。

 

2. 流動性

現状は、流通性はほぼない模様です。投資家が現金化したいときにどうするかというと、ファンド期間内の解約は不可能orプラットフォーマーが言い値で買い取る、という渋い状況。なので、流動性を重視するなら、REIT買っとけという話ですね。REITとの最大の違いは、特定の物件に投資できるということなので、流動性で劣るのは当然。

ちなみに他のクラウドファンドとは若干領域が異なるのですが、個人が自宅を証券化してクラウドから資金調達できるサービスを運営するPimarqという企業は、セカンダリーマーケット(持ち分を他の投資家に転売できる市場)の整備もしており、流動性を高める努力をしています。長期的には、不動産クラウドファンド市場が拡大すれば、転売市場も整備されていくかもしれません。

 

3. プロジェクト・マネジメント力の担保

投資資金はリノベーションなどに使われることが多いのですが、プラットフォーマーが不動産プロジェクトをマネジメントする能力があるのかは若干不安ではあります。

 もともと不動産業界バックグラウンドを持つプラットフォーマーは良いとして、スタートアップ的に立ち上げた会社だと、運用力がどう担保されてるのかは気になります。外部の不動産コンサルを入れるなどで対応している会社もありますが、ちょっと試しに投資してみようかと本気で考えてみると、(自分の専門領域だからということもありますが)躊躇してしまいました。ただこれに関しては、解決策はあるでしょう。

どんな不動産プロジェクトがクラウドファンディングにマッチするか?

一般的にクラウドファンディングは、マッチするプロジェクトがかなり限定されていると思います。共通するのは、これまでにないよう革新的なアイデアだったり、社会を良くするアイデアが投資を集めやすい。では、不動産の場合はどうでしょうか。個人的には以下2つのパターンが理想的だと思います。

 

1. 地域イノベーション型

リターンよりも街・社会を変えることに共感する人たちから投資を集めるSocial Investmentの方向性が合っていると思いました。不動産の場合、わりと限定された地域の発展がテーマになるのではないかと。リターンを重視するデベロッパーやファンド、個人投資家ではできない、収益性はそこそこなんだけどコンテンツがめちゃ面白いプロジェクトは、このスキームにぴったりでしょう。

例えば、ある地域に子育て・教育関連のテナントが集まった商業施設を作ろうと素敵なコンセプトを掲げれば、その地域の子育て世帯の一部は共感して投資してくれるでしょう。

あるいは、廃れた商店街を若者が集ってイケイケなコンセプトで再生するぜ!と訴えれば、地域住民や地域外のサポーターから投資を集めることもできそうです。

 

2. 投資家とテナントの関係構築型

もう一つは、投資家とその物件に入居するテナントとの関係を構築できるケース。

Kickstarterのような購入型クラウドファンディングでは、プロダクトやサービスを開発する前から顧客・ファンとのリレーションを作れることがメリットの一つですが、これは不動産にも応用できそうです。入居するテナントと、その顧客になり得る投資家の関係を構築し、商業施設のオープン後も投資家が継続的に支援してくれると理想的。

建物のオーナーは、その建物に入ってるお店とかをご贔屓にする傾向が強いです。なるべく長く入居してほしいから売上にも貢献したいし、「あ、オーナーさんどうも!」的なやり取りも気持ちいいし。

1と2の組み合わせも当然あるでしょうね。

 

ということでまとめると、やっぱりクラウドファンディングは収益目的が主ではなく、イノベーションをもたらすための素晴らしい仕組みなんだと思います。規制緩和を待ちつつも、小さめのプロジェクトからやってみようかな、とこの記事を書きながら妄想してみました。

※金額は、1ドル=100円換算で記載しています。

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