アメリカ西海岸の北部にある、ポートランド。
この街は、近年東海岸に疲れたクリエイティブクラスが集まってきて、その魅力がとても注目されており、東京R不動産の林さんがむちゃくちゃアツい!と叫んでいた(言い過ぎ?)ので、僕も西海岸に住んでいるこの機会を利用して行ってきた。

今回の滞在中に、ポートランドに20年以上住み、ビジネスをしている日本人お二人(Kurosakiさん、Katsuさん)に、感謝してもしきれないほどお世話になり、街の隅々まで普通の観光では絶対に知ることのできない魅力を教えていただいた。そして、あまりに感動し、インスパイアされてしまい、クリエイティブ方面の企画を一つ始めることにしてしまった。それでも足りないので、この街の魅力をブログに残すことにした。

ポートランドを表現する言葉たち

  • 全米一環境に優しい街
  • クリエーターが多く、アートへの感心が高い街
  • コンパクトで歩ける範囲の町並み、自然もとても身近
  • スポーツが盛んで、Nikeやアディダスの本社がある
  • 身の丈に合ったサステナブルなライフスタイル

と、いろんな表現をされるポートランドだが、まずは、この街にあるエッジの効いたモノ・コトを紹介してみる。

 

パールディストリクト

ダウンタウンから通りを一本挟んだ倉庫や工場が立ち並ぶエリアPearl District。この15年程で、多くの倉庫や工場がギャラリーやカフェ、アパレルショップなどにコンバージョンして再生され、一方で取り壊して建築家がデザインした新築の複合ビルも建ち、まるでデザインコードがあるかのように、新旧素敵な建物が入り交じっている。足下(1階)は店舗で、上層階(2階以上)はクリエーターのオフィスや住居になっているのが多い。ニューヨークのSOHO、サンフランシスコのSOMAエリアなどと同じく、倉庫街にクリエイターが集まってきてエリアが活性化された良い例である。

以下、パールディストリクトにあるもの

Powell’s Books

独立系世界最大(6300平米)の本屋。でかすぎてもちろん全部は回れてないけど、新品と中古が入り交じっている日本では考えられないスタイルで、Architecture(建築)のコーナーだけで天井まで伸びる本棚が6列もあるほど本が多い。マニアにはたまらないって表現がまさにぴったり。建築も含め、デザインやアート、写真などのクリエイティブなコーナーは特に充実していた。

店内にはwfiのあるカフェスペースもあり、一日中ここで過ごせそう。

Wieden+Kennedy

非上場会社では世界最大の広告代理店ワイデン+ケネディの本社。Nikeの広告展開が特に有名で大きい。約600人が働く本社は元製氷工場だった建物を大胆に改装して作られたもの。中央にでかい吹き抜けがあって、その回りに床がある、(一応)建築に携わるものとしてシビれるオフィス。

会社組織は3トップ体制で、クリエイティブのボス、アートのボス、マネジメントのボスがいるらしい。「経営」よりも「クリエイティブ」が重要という意思を表すように、クリエイティブ2人:マネジメント1人という力関係。

オフィスがカッコいいのはもちろん、これほどの企業が元倉庫街という「常識的には大企業の本社が立地すべきでないような場所」に意思を持って存在していることに感動した。

もう1つ、驚いたこと。W+Kの建物前で人を待っていると、Googleのパーカーを来た若者がいたので、話しかけてみた。するとなんと、彼は元Googleで、現在はW+Kが運営するTechスタートアップ向けのインキュベーションプログラムに参加しているとのこと。彼の会社はアスリート向けのWEBサービスを提供しているため、ポートランドでやっているそうだ。シリコンバレーのY combinatorが提供するような3ヶ月のプログラムで、前回の応募者は340社、そのうち参加できるのは8社という倍率。(なにせW+Kのオフィスで働けるんだから、そりゃいいよね)来月また募集があるみたいなので、興味ある方は是非。

PNCA(Pacific Northwest College of Art)

元工場を改装した美大PNCA。学生は400人くらいで、大学院もあるというのが驚き。大学すら元工場を利用しているのがすごい。これほんと日本では絶対に考えられない。建物内は、真ん中に巨大なコモンスペースを作っており、イベントなどに利用しているらしいが、手狭になったので、最近向かいの建物も借り増ししたらしい(笑)日本ならこの贅沢なコモンスペースを真っ先に潰すはず。この辺りの発想がポートランドならではというか、ほんとにイケてる。

ふと思ったのだが、ここがシリコンバレーでいうスタンフォード大学の役割なのかもしれない。スタンフォードからGoogleに就職するように、ここからワイデン+ケネディのようなクリエイティブエージェンシーに就職する人や、独立する人も多いらしく、まさしくポートランドのエコシステムをを垣間みれる。

Ace Hotel

厳密にはパールディトリクトから2ブロック離れるが、最高に良い立地で、古い建物を全面改装されたヒップなホテルAce Hotel。カフェとつながるエントランスはいつもくつろぐ人がいっぱい。リノベーションの内容も、ローコストなのに各部屋の壁にアーティストに絵を描いてもらっているから、全室オリジナリティがあって、とてもうまい。
と、ここまでがパール・ディストリクトにあるモノたち。他にもとっても素敵なパタゴニアが入ってるコンバージョンビルや、ビール工場の再生事例など、まだまだたくさんの魅力的なスポットがあるのだが、これが全部徒歩圏内にあるというのが、ポートランドの魅力。

 

続いてダウンタウンの方に行ってみる。

Multnomah Athletic Club(MAC Club)

120年の歴史を持つ世界最大級のアスレチッククラブMAC。メンバーは5〜10年に1度の抽選でしか募らないし、入会金は3桁万円という中上流階級向けのクローズドコミュニティ施設。

どれくらいでかいかというと、サッカースタジアム(サッカー場じゃなくてサッカースタジアム!)が敷地内にあるし、テニスコート9面、スカッシュ9面、プール3箇所(しかも1箇所は50m)、フィットネススタジオ3つ、その他バスケ、ハンドボール・・書ききれないほど。

さらに、5ツ星ホテルと同程度のロビーや、メンバー向けのホール、会議室、Barなど、ここはなんの施設だっけ?と頭がくらくらするほど充実している。こんな施設があるのも、ポートランドが昔からスポーツの盛んな街であったことを表している。

 

さらに、西へ車で20分ほど行くと、ビーバートンというエリアに着く。そこにあるのが・・・

NIKE’s Headquarters

約5000人が働いているNIKE本社の広大な敷地。敷地をランニングすると、一周するのに50分もかかるんだとか。NIKEは1968年にポートランド生まれのフィル・ナイト氏が自分の車ででアシックス(日本メーカー!)の靴を販売する事業から始め、一代で世界最大のスポーツウェアメーカーになった奇跡的なサクセスストーリー。現在はコンバース、コール・ハーン、ハーレーなど競合を買収しまくり、$20B(2兆円)という巨大企業になっている。

たしかアップルの本社も3000人くらいだったが、同じくすごいと思うのが、ここに工場がないこと。今時当たり前かもしれないが、工場は中国やベトナムがメインなので、ここにはデザイナー、マーケティング、R&Dなど製造以外の人でこの数。敷地内にはプール、バスケコート、サッカーコート、ジム、クライミングなど各スポーツ施設が整っており、従業員の家族や地域に一部開放している。フィル氏が日本好きなので、巨大な日本庭園&池がある。(スティーブ・ジョブズも日本好きだし、なんか 日本好きなCEO多い印象。)

ナイキの存在はポートランドにとってかなり大きい。ワイデンも元々はナイキのために作られたようなものだし、広告以外にも多くの業務をアウトソースもしているはずなので、クリエーター以外にも多くの雇用を生んでいる。従業員だけで5000人なのだから。

 

続いてダウンタウンから川を渡って東へ、South East(SE)エリア。

Jeff Stuhr(Holst Architecture)

ポートランドが誇る有名な建築家Jeffさんとランチさせてもらい、さらに彼の手がけたプロジェクトをいくつか見せてもらった。

Holst Architectureという建築設計事務所の代表Jeffさん曰く、ポートランドはやはりコンパクトなのが魅力だと。中心部は楽しいし、30分〜1時間で、ホンモノの自然がある。以前はパールディストリクトに住んでいたけど、最近は開発され過ぎてるので、このSEエリアにオフィスも移ってきたとのこと。

SEで見たプロジェクトは新築が多かった。中でもデベロッパーが1階に店舗、上がコンドミニアムorオフィスという開発を行うケースが多いようだ。1階店舗部分は、3年はデベが保有する。というのは、3年保有すると売却時の税金が安くなるかららしい。ちなみにJeffさんはPNCAの内装デザインも手がけたそうで、現在スタッフは17人という大所帯の設計事務所を率いるボス。倉庫を改装した自社オフィスも含め、非常に親切に案内していただき感謝!

 

ポートランドのエコシステム

見てきたものを盛り沢山書きすぎてしまったが、あくまで大きな場所や企業だけを書いただけ。実際にはポートランドの魅力は、小さなギャラリーやカフェ、アート関連のショップが街中にあることや、外食文化が根付いているし、たぶん気候・立地的にも恵まれているので、レストランやダイニングのメシがびっくりするくらいうまいことだったりする。だから、観光よりも「住む」方がその魅力を味わえるはず。「見せるための街」ではなく「満足して暮らすための街」。

で、こうしてポートランドにあるモノ・コトやその動きを見ると、そこには独自のエコシステムができあがっていることがわかる。シリコンバレーにはスタートアップやテクノロジー企業がどんどん出てきて、世界を制覇していくエコシステムがあるように、ポートランドには、クリエイターやスポーツ好きな人、会社が集まり、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)が高いライフスタイルをサステナブルに保っていくエコシステムがあるのだ。

スポーツが盛んになる自然環境→120年の歴史を持つ世界最大のアスレチッククラブMAC→がある街に生まれたNIKE→のための広告制作会社ワイデン+ケネディ→に人材を輩出する美大PNCA→が作り出すアートな街でゆったりと、しかし仕事がある生活ができるからQOLを求めるクリエイターが集まる→メシがめちゃくちゃうまい、という好循環。(ほんとは順序はもうちょい複雑)

福岡はポートランドを目指したら面白いかも?

僕が活動の拠点としている福岡は、中心部は歩けるコンパクトな街で、海・山・川といった自然も30分圏内、さらにメシがめちゃくちゃうまいというQOLの高い街。クリエイターも多いし、スポーツはまあそこそこ。ポートランドのようにHappenするためのピースが揃っているのだ。福岡に独自のエコシステムを作れたら面白いな、と今回のポートランド滞在を通して強く感じちゃったので、いろいろやってみたいと思います。ちなみにポートランドの魅力は「グリーンネイバーフッド」という本にばっちり書いてあるので、よかったらどうぞ。僕が書いたのはまだまだその一部。

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